『桜紀行』

早咲きの桜を追って、北へ旅をする。

一時間に一本の電車に乗って
ICカードを読み取らない駅に降りると
そこは見知らぬ、春だった。

とても静かで、騒がしい。
道が広くて、歩きにくい。

花見酒の酒気が混ざる住宅街を
肩身狭く通り抜けた、その先には

まだ初心な、桜が咲いていた。


photo by「紺碧のしぐま」様
2018.04.08