『アトカタリスト』

跡形もなくなりたかったのだと、
私のアトカタは、錆びた声で語り出す。

夢を嘘にしてしまえず
嘘を本当だと思い込むことも出来なかったから
傷付くだけの不毛な未来を捨てて
消えてしまいたかったのだと。

けれど人間一人の消滅は、かくも難しいらしい。

立つ鳥が跡を濁さないようにはいかず
羽無しが努力した結果、

昨日の影のようにコンクリートにへばりついている
中途半端な過去の痕跡。

それは実態よりも悪目立ちする、私のアトカタ。


photo by「くれよん」様
2017.09.24





女の子だったあの頃。

匂い付きのペンでシール帳に友情を誓った。
ハンカチとティッシュの嗜みを持っていた。

カバンの中に、シール帳が無くなったのはいつだろう。
ポケットの無い服ばかり選んで、嗜みを忘れたのはいつだろう。

女の子を象るもの達は
勝手に、いつの間にか、私から卒業していった。

あ、でも
ラメやビーズはまだ大好き。